22.10.18 アーティザンインタビュー~桶樽職人 谷川清さん編その1

「讃岐桶樽」にはどんな特徴があるのでしょうか?

明確な定義ははっきりとはしないのですが、作られる地域によって使用する「木」やその使い方に特徴があるとは言えると思います。

讃岐では、その昔「桶」はヒノキの薄板を曲げて桜や樺の皮で閉じ底をつけた曲物でしたが、室町時代に板を円筒形に並べてタガで締め底板を入れた構造になったと言われています。

谷川木工芸では「吉野杉」の白杉を使い床板には相性の良い「もみ」を使用しています。「白杉」だけを使うことで木の香りが食べ物にうつりにくくなるので食べ物を一時的に入れておくのに重宝されています。

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―「桶」と「樽」の違いは具体的にどういったところでしょうか?

実は真逆のモノだと言えるかもしれません。神事に使ったり、寿司などを作るときに使ったりする「桶」は食べ物などを一時的に保管する役目として昔から使われていました。自然と水分調整をしてくれるのは木の取り方が柾目(まさめ)になっているからです。見た目にまっすぐな線が並ぶ形です。

醤油屋さんなどで使われる「樽」は長期保存される役目を担っていることが多いイメージです。そのため、水分を吸収したら困るので木を板目(いため)に取ります。見た目に木の節や曲線が見えます。「桶」はカテゴリーであり、そこから「樽」は生まれてきたものと捉えています。

―谷川木工芸について詳しく教えてください。

昭和30年に初代がすし桶製造所として創業しました。以来、ずっと「すし桶」をメインに作ってきました。昭和42年に「谷川木工所」に、平成26年2代目が様々なアイデアを形にしていきたいとの思いから「谷川木工芸」へと名前は変わりましたが「手」が生み出す「木」のぬくもりを大切にしていることは変わっていません。

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―「家業を継ぐ」という意識は、子どもの頃からありましたか?

家の仕事には継ぐまで全く興味がなかったです。介護の仕事を10年ほどしていましたが、管理者の立場になった時、ふと何か新しい目標をもって別のことに取り組みたいと考えるようになりました。そこで選んだのが「讃岐桶樽」の世界でした。

最初、両親には大反対されましたが決意は変わることはなかったです。自分がどこまでも成長していける世界に足を踏み入れたくなったんです。

―桶樽職人の魅力は?逆に大変なことはありますか?

まだこの世界に入って5年なのですが、できることはたくさんあると感じていますし、実際大きく変化していると思います。今の時代に沿っていくことを実感してもらえる仕事が増えていくことで、大反対していた両親も「桶屋でよかった」と感じてくれている部分があるかもしれません。

 

――お仕事をするうえで最も大切にしていること、職人としてのこだわりを教えてください。

最初は何もわからない状態だったので、こだわりを探している状態でした。まずは技術を磨くことから初めて、同時にその先にやりたいことを実現していくための準備を進めました。

そして今は「丸」を作ることにこだわっています。「桶」というそもそもの存在を大切にすることこそ「谷川木工芸」のあり方でもあると思います。